プレゼンテーションのやり方

2010/12/26 奈佐原顕郎

ゼミ発表や卒論/修論発表、学会発表などで、良いプレゼンをするにはどうすればよいかについてです。


心構え

100%の準備をすること。

これがいちばん大事です。ここでいう100%とは「完璧」という意味ではありません。自分の全力を出し切れ、ということです。データも図表も構成も、全て、「これ以上は今の自分にはできない」というものを出して下さい。

どんな小規模でも、プレゼンとは勝負の場です。発表者の人格とか経歴とか功績とかに無関係に、「話の内容」を吟味される場です。こういう勝負の場で中途半端なモノを出す人は成長できません。何かつっこまれても、他人と自分に対して、すぐに「考えが足りなかった」とか「勉強不足だった」という言い訳で逃げてしまいます。ところが、100%の力を出し切った人は、なぜ考えが足りなかったのか、なぜ勉強不足だったのか、というところまで踏み込んで自分に問いかけることができます。自分に何が足りなかったのかが、明確にわかるのです。

100%を出し切れば、爽やかな気分になれます。これが今の自分の全てだ、というものを出せば良いので、自信を持って落ち着いてプレゼンできるし、落ち着いて質疑に対応できます。100%を出し切らない人は、準備不足の後ろめたさがあるので、自信を持てないから落ち着いたプレゼンができません。従って、準備不足のプレゼンをやることは、決して許されません。

プレゼンはサービスである。

ビギナーは、「とにかくプレゼンを無事に終わらせること」を考えがちですが、それはダメです。プレゼンはあなたのためのものではなく、聴衆のためにあるのです。聴衆は、忙しい時間を割いてあなたのプレゼンを聞いてくれるのです。それに対する感謝の気持ちを決して忘れてはいけません。聴衆に, 少しでも多くの有益な経験をしてもらえるよう、サービスしなければなりません。例えば20分間のつまらないプレゼンを40人の専門家に対して行ったら, 合計で800分間(13時間以上)の貴重な時間を無駄にするのです。人件費で換算すれば数十万円の社会的損失です。従って、サービス精神を持たずにプレゼンをやることは、決して許されません。

プレゼンはエンターテイメントである。

プレゼンの目的は、あなたの主張を聴衆に伝え、それを聴衆の心に刻んでもらうことです。一般的に人間は、楽しいことはよく理解するしよく覚えます。従って、プレゼンでは聴衆を楽しませることが大切です。

といっても、漫才や手品をする必要はありません。あなたの主張が価値のあるものならば、それを素直に、わかりやすく、印象深く伝えるように努力すれば、結果的にあなたのプレゼンは「エンターテイメント」になるはずです。逆に言えば、あなたのネタが価値のないものであれば、どんなに飾っても聴衆を楽しませることはできないでしょう。そういうプレゼンは、やらない方がいいのです。

プレゼンは、どうしても型式ばったり格式ばった雰囲気になるものです。そのような「固い雰囲気」では、聴衆はプレゼンを楽しめません。従って、聴衆をリラックスさせることが重要です。そのための、ちょっとした仕掛け(スライドにあなたや共同研究者のユーモラスな写真を入れる等)は有効でしょう。それが成功すれば、聴衆はあなたに心を開き、身を乗り出してあなたのプレゼンを聞こうとするでしょう。また、演者が緊張していると聴衆はリラックスできませんので、あなた自身が適度にリラックスすることも重要です。

プレゼンは喜びである。

プレゼンの主役はあなたです。あなたには聴衆を楽しませる義務がありますが、聴衆は全員、あなたに注目し、あなたの話を聞くのです。あなたはこれをチャンスと思うべきです。いかにあなたが重要な仕事をする重要な人物であるか、存分に聴衆に印象づけることができるのです。それは決してスタンドプレーではなく、あなたの人生の晴れ舞台なのです。満場の視線と喝采を浴びることは、子供でも持っている、人間の根源的欲求です。それに素直になりましょう。あなたはプレゼンの機会を与えてくれた人に感謝し、日頃の研鑽と努力の成果をもとに、あなたの自己顕示欲を大いに発揮しましょう。聴衆を楽しませることで、あなたも楽しみましょう。気持ちの入らないプレゼンを義務感だけでするようなことは、決して許されません。

プレゼンソフトに依存しないこと。

プレゼンソフト(MS-PowerPoint等)を使えば、自分がよく把握していないことでも適当にプレゼンできてしまいます。自分が何も覚えていなくても、スライドに必要な情報を全部入れておいて、それを適当に流していけばとりあえず形になりますから。でも、スライドは「カンニングペーパー」ではありません。スライドはあくまで補助。スライドだけに頼らず、話す内容をきちんと頭に入れておきましょう。練習として、スライドを使わないで黒板やホワイトボードを使うプレゼンをやりましょう。

ダメなプレゼンを真似ないこと。

優秀な学者や教育者の中にも、プレゼンがダメな人はいます。そのようなプレゼンを見て、「あの人でもこういうプレゼンをするのだから、それでいいんだな」などと思ってはいけません。たとえプレゼンがダメでも、本質的な技能や業績があれば大目に見てもらえるものですが、それは決して褒められることではありません。本来、自分の考えをきちんと人に伝えることは、どのような人であっても習得しておかねばならない、基礎的な能力です。

ダメなプレゼンは罪であると認識すること。

ダメなプレゼンは罪です。何をおおげさな、と思うかもしれませんが、こう考えてみましょう: 学会や研究会、説明会などでプレゼンがダメだと、本来は伝わるはずの情報が伝わりません。その結果、最新の知識や技術、重要な問題などが共有されません。また、そのような「つまらない会」には次回から人が集まらなくなります。それによって共同体が求心力を失い、知的資産が継承されず、専門家どうしが連携を失っていきます。そのような結果、社会の問題に対する取り組みが遅れ、有用な研究や事業が、無駄な研究や事業に埋もれてしまい、資源が有効に配分されません。そうして社会は停滞していきます。知識社会・情報社会にあって、ダメなプレゼンは諸悪の根源なのです。


話し方

明瞭に話すこと。

声が小さいと、それだけでそのプレゼンはNGです。大きな声で、ゆっくりはっきりしゃべりましょう。

聴衆の目を見て話すこと。

アイコンタクトとも言います。聴衆の目を見て、聴衆の反応や表情を見ながら話をすることです。ビギナーは、ほとんどアイコンタクトができません。

人の目を見て話すことができるのは、自信の表れです。自信が無い人は、聴衆の目を見ることができません。どうしてもアイコンタクトができないという人は、まず前述の、「100%の準備」をしているかどうか、自分に問いかけてみて下さい。

自信がなくても、がんばって聴衆の目を見ましょう。聴衆は身を乗り出して聴いてくれているか、あるいは下を向いたりよそみをしているか、観察して下さい。一人でも身を乗り出してくれていれば、それがあなたの自信になります。

どんなに面白い内容でも、発表者がアイコンタクトしないと、聴衆の集中力はすぐに落ちてしまいます。聴衆は、「ああ、あいつは勝手にしゃべってるなあ」という気分になって、話についていこうという気力を無くしてしまうのです。聴衆に無かって、「ここまでわかってくれましたか?」と、目で問いかけましょう。

間をとること。

ずーっとしゃべり続けるのは疲れます。聞く方も疲れます。適当に間を空けて、リズムを整えることが大切です。 いちばん簡単な間のとり方は、聴衆に、「ここまでで質問はありませんか?」と尋ねることです。何も質問が 出なくても、「なら続けましょう」で次に進めばいいのです。

差し棒やレーザーポインタを振り回さないこと。

スライドの上を差し棒やレーザーポインタでうろうろ指し続ける人がいます。それは聴衆の視線を迷わせます。指し棒やレーザーポインタは、「ここを見てほしい」というところをはっきりと指すときだけ使い、それ以外のときは下ろしておきましょう。レーザーポインタのスポットは、スクリーンの上では速く大きく動くので、聴衆にとって見失いやすいものです。気をつけましょう(そのため、私はなるべくレーザーポインタを使わず、指し棒を使うようにしています)。

自分の体も使ってプレゼンしましょう。

多くの場合、演台はスクリーンから離れています。そのため、聴衆はスクリーンと演台をひとつの視界に収めることができません。その場合、演者が演台に張りついていると、聴衆は演者を見ることができず、演者の声とスクリーンに写ったスライドだけをたよりにプレゼンを聞きます。そのようなプレゼンは動きに欠けるため、退屈や眠気を誘います。演者はできるだけ演台から離れ、スクリーンのすぐそばに立ち、聴衆の視界に入るように努めましょう。そして、身振り手振りも交えて、体で聴衆に語りかけましょう。

普段から言葉遣いに気をつけましょう。

日常的な会話の中でも、自分の考えを簡潔・明瞭に伝えるように心がけて暮らしましょう。 日常では全てを言葉にしなくても「あうんの呼吸」でものごとが進むものですが、そこを あえて、きちんと丁寧に言葉に出して説明するように努力しましょう。


スライド

スライドを戻さないこと

プレゼンの途中で, 既に出したスライドに戻ろうとするのはダメです。聴衆にとっては、話の流れを混乱させます。 必要ならば、同じスライドを該当個所に複製しておけばいいことです。スライドは一方通行が原則です。


質疑応答

「わかりません」も立派な答えです。

質問に答えられないときは、素直に「わかりません」と言っても良いのです。そして、なぜわからないかを説明しましょう。いちばん多いのは、「質問の意味がわからない」ということです。その場合は素直にそう言えばよろしい。質問の意味がわかってもなお「わからない」ならば、あとは、自分の知識ではわからないだけで実は世の中では既に知られているかも知れないか、あるいは、誰もまだ解明できていないかのどちらかです。前者の場合は、「今後検討します」とか言っておけばよいし、後者の場合はその背景などを手短かに説明しましょう。発表後の懇親会では、その話で盛り上がるでしょう。「わかることとわからないことをはっきり区別する」というのはとても大切な態度ですので、それができる人は好感を持たれます。

否定的な質問やコメントには闘いましょう。

ただし、研究内容を否定するような質問やコメントに対して、すぐに引き下がるようではいけません。あなたは、すくなくともそのテーマについては全力で深く考えてるはずなので、その全てを出して、自分の立場を説明しましょう。否定的な質問やコメントは一面的な見方に立脚していることも多いので、動揺しないで落ち着いて考えましょう。その場で決着をつけなくてもいいです。発表後に、個人的に議論させてもらいましょう。否定的なコメントをうまく乗り切ることができれば、あなたはぐっと成長するし、質問した人はこんどはあなたの味方になってくれるかもしれません。


参考になるサイト: セミナーの準備のしかたについて by 河東先生