当研究室に入りたい学生さんへ

2014/05/17 奈佐原(西田)顕郎

はじめに

下にも書いていますが, 私が学生さんに、ばかのひとつ覚えのように言うのは、「すこしづつでいいから毎日、決まったテキストを必ず読みなさい」ということです。10年以上、大学教員をやってきて、たどりついた答えはこれです。これができない学生さんには、どうやって指導したらいいのかわかりません。しかし、そういう学生さんも、他の面で、高い潜在能力を持っているはずなのだから、どうか、他に良い先生に巡り会って、その才能を開花させることを祈ります。

当研究室には向かない人

当研究室は, 基本的に誰でも歓迎しますが, どこの研究室にも独自のスタイルや雰囲気があるように, 当研究室にもそれなりのものがありますので, 合う人・合わない人がいるでしょう(合わない人は能力的にダメだというわけでは決してありません)。ミスマッチはお互いの不幸ですから, 事前に以下に当てはまらないか, チェックしてみてください。


納得しておいて欲しいこと

  1. きちんと連絡

    情報共有は大事です。連絡の多くはメールです。研究室のメーリングリストに入って, 可能なかぎり毎日, メールチェックしてください。自分に問いかけられている連絡にはきちんと答えて下さい。

  2. 研究室に来るのは自由

    研究室に来る時刻や, 研究室から帰る時刻の規程はありません。研究室に来ること・来ないことは, あなた自身が決め, その結果はあなた自身が責任を負うのです。これは自己管理(self-management)の訓練です。

  3. 戸締り・鍵の管理はしっかりやること

    研究室への出入りは自由なので, 戸締りや鍵の管理は, 個人個人に任せます。研究室を空けるときは, たとえ短時間であっても, 施錠すること(1階の部屋は, 扉だけでなく, 窓も施錠すること)。各自に貸し出された鍵は紛失しないように。無断で合鍵を作ってはいけません。卒業など, 研究室を出るときは鍵を返却すること。カード式の鍵には磁石を近づけないこと。

  4. 研究室の物品を大切に使うこと

    研究室の物品はあなたの私物ではありません。使ったらもとに戻す, 壊さないように丁寧に扱う, 消耗品を無駄に使わない, 私用には使わない, などを心がけて下さい。

  5. 研究室を掃除すること

    研究室には掃除当番というものはありません. 自主的に掃除して下さい。ゴミやホコリは機械の故障や事故・火災等の原因になります。

  6. 携帯での私用電話は研究室の外でやること

    わずかな時間なら多少は構いませんが、基本的には私用電話は研究室の外に出てやってください。研究室の電話は私用禁止です。

  7. 自分の役割を果たすこと

    ゼミ発表の担当や, 研究室内の役割分担などがあてられ, 引き受けたら, その責任を果たしてください。例えば, 自分が発表すべきゼミを, 「間に合わない」「結果が出ていない」等の理由でキャンセルするのはダメです。やむを得ない事情で責任を果たせない場合は, 事前にしかるべき人に連絡し, 説明して許可を得てください。

  8. 学生さんが自分から希望を言い出さない限り, 野外調査には連れて行きません。

    野外調査は, どんなに小さくてもリスクがつきものです。それを減らし, さらにまた, 調査の準備や現場での測定の精度を上げるには, 学生さんにも, 自発的なコミットメントが必要です。従って, 「先生に言われたからついていこう」という学生さんは, 連れて行きません。もちろん, 私の方から「一緒に行く?」と誘うようなことは言います。しかし, それに「はい」とうなずくだけの学生さんは連れて行きません。

  9. 卒論・修論などは, 私が「これでよい」と認めたものしか受けとりません。

    卒論・修論は, 「科学的・具体的な内容の長い文章を, わかりやすく, 正確に書く」ことの訓練です。ほとんどの学生さんは, その仕事を自力でやりとげることはできません(一人前の科学者ですらそうであって, 学者の論文には, 必ず他の学者による査読が行われます)。従って, 学生さんは, 卒論・修論をひとりよがりに「仕上げた」と思ってはなりません。教員のチェックを受け, 修正する, という作業を繰り返してください。人にもよりますが, そのスピードは, 1ページあたり1日程度です。30ページの卒論ならば, 1ヶ月程かかります。つまり, 提出期限の1ヶ月前には, 学生さんは「自分なりの完成」に到達し, チェック&修正に取り掛かっていなければなりません。この作業は, 苦しくて大変なものですが, 必ず学生さんを大きく成長させます。

  10. 卒論・修論を私が認め, 受け取って, はじめて「卒業」となります。

    中途半端な卒論・修論しか出していない状態でも, 発表会を乗り切ることはできるかもしれません。「卒業認定」も貰えるでしょう(良くないことですが, 学生さんの将来を考えてそういう決断がなされることは多々あります)。でも, その状態で卒業式に出て教員に「お世話になりました」と挨拶するのは止めてください。

  11. 毎日欠かさず, 基礎的な「勉強」をして下さい。

    何か本を決めて, 毎日, 絶対に欠かさないで読み続けること。専門に関する, きちんとした教科書を。読む時間や分量は, 自分で決める。疲れたときや忙しいときは, 5分でも1行でもいい。自分の日常にどんなに嬉しいことや悲しいことがあっても, 必ず毎日, 続けて下さい。医師からの禁止が出るような病気や怪我でなければ, どんなに体調不良でも, 必ず毎日, 続けて下さい。絶対に, 1日も休んではいけません。

    これを続けると, 勉強が「習慣」になります。怠惰は人間の普遍的な性質ですが, 怠惰に打ち勝つ唯一無二の能力が「習慣」です。勉強を習慣にした人は, 必ず大きな成長をします。

    みなさんは, これまで, なにかきちんとした本(小説や新書, エッセイ, 一般解説書などではなく, 学問に関する専門書や教科書)を, 最初から最後まで, 読み通したことはありますか? おそらくほとんどの人が, 「少し読んだ」とか「だいたい読んだ」という本を持っていても「ぜんぶ読んだ」という本を持っていないでしょう。本を1冊, 「ぜんぶ読む」という体験は, 知的成長に不可欠です。それをするための, 最も楽で確実な方法は, 上記の「毎日読む」です。最初は薄めの本を選ぶこと。

    追記(2010/02/27): 学生さんの多くは, 何回か言われねばこの「毎日勉強」をやってくれないようです。私はそれを残念に思います。一日でも勉強を欠かす人は, 私の研究室から出てください。いいですか?どんな仕事でも, プロフェッショナルな人たちは, 自分で選んだ仕事のために努力しているのです。あなたは(少なくとも学生の間は)学ぶことを選んだのですから, 学ぶことを怠けてはいけません。

  12. 毎日欠かさず, 英語の勉強もしてください。

    前項と重なりますが, 英語の勉強も重要です。これも継続的な積み重ねが重要です。あなたの同世代の中国や韓国の学生は, 上手に英語を操っています。私は, 英語を操れない学生を自分の研究室から輩出させません。あなたも「英語が使えない人間は21世紀のホワイトカラーや研究者にはなれない」ということを強く意識して, 一生懸命に英語を勉強して下さい。読む・書く・聞く・話すの全てについて, 経験する量を増やせば増やすほど, 英語は上達します。

  13. 自分の時間を安売りするようなアルバイトをしないこと。

    アルバイトは社会体験として重要ですが, 単純作業などのアルバイトは, ある程度経験したら, 卒業すること。いろんな体験をしていろんな職業の人の気持ちを理解したりするのは確かに大切なことですが, みなさんが今やるべきことは, きちんと勉強し, 知的・専門的に社会を支える人になることであり, そのことのトレーニングに集中しなければなりません。それは国立大学に入ったあなたの社会的使命ですし, 同時に, あなたの幸せのためでもあります。あなたが少しでも勉強すれば, あなたの人材としての付加価値が高まります。その結果, あなたは少しでも専門性のある仕事ができるようになるでしょう。その結果, 仕事の選択肢が広がるのです。

    たとえアルバイトをするにしても, きちんと基礎学力やスキルを持って入れば, 良い条件のアルバイトができます。どうせアルバイトをするのであれば, そこで自分の知識やスキルを生かし, それらをさらに高めることのできるようなアルバイトをやってください。コンピュータやネットワークの知識・経験は, その入口です。それらがあれば, つくばならいろんな研究所で雇ってくれるでしょう。研究所は面白いことの宝庫です。

  14. オープンソースソフトを使うこと

    当研究室では, 計算機のソフトウェアは, オープンソースソフトウェア(Linux, GRASS等)を使うことにしています。Windowsその他の, 非公開商用ソフトウェアは, 原則的に使いません。

  15. 規則正しい生活をすること

    毎日勉強することや, 自己を管理することの基本は, 規則正しい生活です。生活が乱れると, 勉強や研究の効率が落ちるし, 心身の健康も乱れがちになります。特に, 睡眠時間をきちんととって, 毎朝, 朝ご飯を摂ってください。


覚えておいて欲しいこと

 あなたが上の「納得しておいて欲しいこと」を納得し, 許可を得て研究室に入ったならば, 教員はあなたを全力でサポートします。あなたはどんな困ったことでも, 私に相談して構いません。私の手に余る問題なら, もしかしたら手助けできないかもしれませんが, いつでもどんなことでも話は聞きます。学生の指導は教員の職務における優先事項ですので, あなたからの相談は最優先で受け付けます。

 あなたには, いずれ, 研究や生活や人間関係や就活やその他の何かがうまくいかず, 落ち込む時が来るでしょう。そのような挫折は誰にでもあることです。あなたは優等生でこれまでそのような挫折はなかったかもしれませんが, いずれ必ずそういうことを経験します。そのような挫折の中で自分に向きあうことを経験し, 「自分との付き合い方」を学ぶことも, 大学での大切な勉強です。それをどう克服するかは人それぞれですが, 大事なのは, 焦らないこと, 必ず立ち直れると信じること, そして, 弱い自分を受け入れて, 人(教員や学生相談窓口など)に助けを求めることです。

「はいあがろう。『負けたことがある』というのが、いつか、大きな財産になる。」 山王工業 堂本監督 (スラムダンクより)


研究室に入るまでにやっておくこと

  1. 学類授業: 基礎数学 を履修(または聴講)
  2. 学類授業: 物理学 を履修(または聴講)
  3. 学類授業: 数理科学演習 を履修(または聴講)
  4. 学類授業: 物理学実験 を履修(または聴講)
  5. 学類授業: 化学実験 を履修(または聴講)
  6. 学類授業: 生物学実験 を履修(または聴講)
  7. 学類授業: 地球学実験 を履修(または聴講)
  8. 学類授業: 測量学 を履修(または聴講)
  9. 学類授業: 測量学実習 を履修(または聴講)
  10. 数学リメディアル教材 ... 全部丁寧に勉強すること。
  11. 基礎数学教材 ... 全部丁寧に勉強すること。
  12. 力学 ... 全部丁寧に勉強すること。
  13. 生物資源の基礎数学 ... 全部丁寧に勉強すること。
  14. 必修書1: 本多勝一「日本語の作文技術」朝日新聞社
  15. 必修書2: 木下是雄「理科系の作文技術」中公新書
  16. 必修書3: 杉原厚吉「理科系のための英文作法」中公新書
  17. 勉強の心構えを読む:
  18. TOEICのテストを受けておくこと。

研究室に入ったら

以下の事をやってください。必ずしもこの順番にやる必要はありませんが, 全部やってください。
  1. 数学のテストを受ける。
  2. 名前・メールアドレス・電話番号(携帯)を教員に伝える。
  3. 研究室内のメーリングリストに登録してもらう。
  4. 部屋をぜんぶ案内してもらう。主な機器や資料の場所と利用法(ルール)を覚えること。
  5. 部屋と机を決める。教員と相談。
  6. 部屋の鍵をもらう(借り出す)。卒業するときは返却のこと。鍵のコピーは勝手に作ってはいけない。
  7. 研究室のサーバー(メール・ウェブ・ファイル)"ryuiki"にアカウントをもらう。
  8. 研究室に机をもらったら, まず, 以下のものを並べて下さい:
    地図帳: とりあえず中学や高校のときに使った地図帳でよろしい。
    英和辞典: 圧倒的な語彙数に定評のある, 「リーダーズ英和辞典」を。高校などで使っていた学習辞典では, 専門英語を読むのに必要な語彙が全く足りません。インターネット辞典に頼るのはダメ。
  9. コンピュータを作る。 ... こちらを参考に。
  10. 名刺を作る。研究を始めると, いろんな人(外部の研究機関の研究者や業者さん)とおつきあいするようになります。名刺を持たずに初対面の人に会ってはいけません。
  11. 研究関係のメーリングリスト(ecores)に入る。
  12. 研究の心構えを読む:
  13. ここの「入門コンテンツ」を全部やる!
  14. ↑これをやりながら, 並行して以下↓の必修書を読む!
  15. ↑これをやりながら, 並行して以下↓のビデオ(DVD)教材を見る!
  16. データ処理・可視化入門 ... ぜんぶやること。
  17. 以下の論文を読み, 疑問点を先輩・研究員・教員に聞いて, 理解する:
  18. 研究テーマを決める。
  19. C言語入門インターネット版 ... ざっくり読んで試すこと。
  20. SAILモデル ... とりあえず走らせてみること。
  21. 人工衛星についてのFAQ (JAXA) ... ぜんぶ読むこと。
  22. 地球観測についてのFAQ (JAXA/EORC) ... ぜんぶ読むこと。
  23. リモートセンシング基礎講座 (JAXA/EORC) ... ぜんぶ読むこと。
  24. 一般ユーザーのためのネットワーク入門
  25. MODISの解析用ソフトをインストール。 参考ページ

卒論・修論


研究室を出るとき

  1. 部屋の鍵を返却すること。
  2. 私物を完全に, 撤去もしくは処分すること。「立つ鳥後を濁さず」も、大学で学ぶべきことの一つです。
  3. 卒論・修論の完成稿とその電子媒体(下記)を担当教員に提出。
  4. 4月以降の連絡先, 特に電子メールアドレスを伝えること。大学のサーバーのメアド(sからはじまるやつ)は、使えなくなるので、かわりのメアドを教えてください。
  5. 大学が行っている卒業後の進路調査に答えておくこと。
  6. 学会に入っている場合は, 卒業後の連絡先等を学会に伝え, 会員区分(学生会員)を適切に変更通知すること, もしくは学会を退会すること。これができていないと、卒業生宛の学会誌が継続的に研究室に届いたり、学会費の請求が研究室に届いたりします。
  7. 研究室で支給された備品(パソコンやディスプレイなど)を返却すること。パソコンには、その来歴(誰がいつからいつまで使っていたか, 調子, 故障箇所等)を付箋に書いて、貼っておいてください。
これらは, 人伝えにするのではなく, 自分でやってください。
マニュアルを書こう。

参考スケジュール

学類3年 11月 研究室配属
     机をもらう
     物理学・英語の勉強(毎日)をはじめる。本は指定。
     学類生の数学補習のTAをはじめる。
12月 研究室の先輩の名前と顔とテーマを覚える。
     ゼミで物理学の勉強内容を発表する。3月末まで, 各人, 2〜3週間に1回の頻度で続ける。
     学類「流域保全学実験」(宮本・眞板・西田)を履修。
     先輩の卒論・修論の追い込みを手伝いながら, ペーパーワークのノウハウや, 研究スピリットを盗む。
     そうしながら, 研究テーマの候補を3つ, 考える。
 2月 指導教員と相談して研究テーマを決める。
     ゼミ発表(研究テーマについて)
     研究開始。
 3月 物理の本を1冊, 読み終える。
     次に読む本を自分で決め, 読みはじめる(毎日)。
学類4年  4月 公務員試験申し込み
     ゼミ発表(研究に関する論文のレビュー)
 5月 公務員試験受験
 7月 ゼミ発表(研究中間報告)
 9月 リモセン学会か写真測量学会に発表申し込み
10月 卒研中間発表(学類)
     学会発表
11月 卒論を書きをはじめる。
11月30日 卒論の下書を指導教員に提出 
	      (修正を要する点は多々あっても, ともかく目次から本文・文献リスト・図表までぜんぶ)
12月 卒論の独自修正。
12月31日 卒論第一稿(ファースト・ドラフト)を指導教員に提出 (自分ではこれ以上, 直すことはない, というレベル)
 1月 卒論の添削・修正。1ページづつ・1行づつ, 指導教員とチェック。
 2月中旬 卒研発表会 (学類)
 2月28日までに, 卒論最終稿を完成・提出
 3月 院に進学するのなら, 投稿論文を書きはじめる。
 3月31日 投稿論文完成・投稿
修士1年  4月 公務員試験申し込み
 5月 公務員試験受験
     学会発表申し込み
     投稿論文の査読結果がこの頃, 来るはず。
     投稿論文の修正・再投稿
 6月 学会発表

以後の スケジュールは, 個人の力量とキャリアプランに応じて。

修士課程から入る人は, 学類から入る人にくらべて, 約1年半の遅れがありますので, 特に
がんばってください。以下のスケジュールが最低ライン:

修士1年 6月 研究室配属
     机をもらう
     毎日の勉強をはじめる。本は自分で選ぶ。
     研究室のメンバーの名前と顔とテーマを覚える。
     指導教員と相談して研究テーマを決める。
 7月 ゼミ発表(学部時代にやった卒業研究について)
     研究開始。
 9月 ゼミ発表(研究テーマと研究の進捗状況)
     学会発表予稿提出
11月 学会発表