情報共有について

2016/08/30 奈佐原(西田)顕郎

まず以下の寓話を読んでみて下さい:

寓話1: AさんはB先生の研究室から高額な機器を借りていましたが, それを使う仕事が終わったので, そろそろ返そうと思っていました。Aさんと一緒に仕事をしていたC君が気を利かせてB先生の研究室にその機器を持って行って, そこの学生D君に返却しました。ところがC君はそのことを, AさんにもB先生にも伝えずに, 帰省してしまったのです。翌日, 機器をB先生に返そうと思ったAさんは, あるはずの機器がありません! Aさんは慌てて部屋中を探しましたが見つかりません。ついにAさんはB先生を訪ねて、「機器を紛失しました」とお詫びし, どうやって弁償しようかと相談を始めた頃... D君が, 「それ, C君が持ってきて私が預かってますよ」と言い出しました。


寓話2: A君はB先生の授業のTAをやることにしました。B先生はA君に, プリントの印刷を頼み, 出張に行きました。ところが出張から帰って翌日1限の授業前, B先生の手元にはまだプリントがありません。焦ったB先生はA君の携帯に電話しましたが留守電でつかまりません。B先生は慌てて事務室に駆け込み, 急遽100枚のプリントを印刷し, 授業開始ぎりぎりで教室に駆け込んだところ... 既にA君が印刷したプリントが教卓の上に置かれ, A君は教室の後ろで待機していました。
寓話3: A君とB君は, 一緒にC大学の演習林での野外調査の計画を立てていました。A君はC大学演習林のD先生にメールを書いて日程調整を始めました。ところがA君はそのことをB君に伝えませんでした。一方B君は, 同じC大学演習林のE技術職員と知り合いなので, Eさんと日程調整を始めましたが, そのことをA君に伝えませんでした。ある日の打ち合わせで, D先生とEさんは, 同じ日程で筑波大学から2件の利用申請が出ていることを知り, おかしいな、これはひょっとして同じグループなのかな? と考えました。食事や寝室, 輸送手段などをそれぞれ別々に用意していたC大学演習林は混乱し始めました。
寓話4: A君の研究室のプリンターのブラックトナーが切れました。ちょうど買い置きの新品のブラックトナーがあったので、A君は気を利かせて, 新品に交換しました。その後数カ月して, 卒論提出の昼ころ, またプリンターのブラックトナーが切れました。ところがこんどは買い置きがありません! 卒論提出期限は午後3時です。研究室には、まだ卒論を印刷し終わっていない学生の悲鳴が鳴り響きました。この研究室では常に1本の買い置きをしてあったのですが, 以前にA君が交換した時, 補充の手配がなされていなかったのです。
 いかがですか? いずれも「ちょっとした失敗」「行き違い」のように思えるでしょう。でも, これらは全て, 「情報共有」の失敗から起きたトラブルであり, 防げるものであり, 防がねばならぬものです。 寓話1では, C君がAさん, B先生, D君に宛てて, 「機器をD君に預けた」という内容のメールを1本書けばよかったのです。一方, D君も, そのことをB先生に早く伝えるべきでした。しかし仮にD君がB先生にそのことを伝えても, Aさんが「大事な機器が無くなった!」と焦る状況は防げませんね。やはりこの件の「連絡」はC君がやるべきでしたね。

寓話2では, A君はプリントの印刷が終わったことと, それを直接教室に持って行くことを, B先生に報告しておけばよかったのです。それはB先生がA君にあらかじめ指示すればいいことだろ? という意見について, あなたはどう思いますか?

寓話3では, A君がD先生に送るメールを, B君にCCすれば良かっただけです。その手間, わずか10秒です。それを惜しんだために大騒ぎとなり, C大学演習林では, A君・B君の大学の学生は「使えない奴ら」ということになってしまいました。 寓話4では, A君がトナー交換したことを, 研究室の同僚全員に研究室のMLなどで知らせればよかったのです。そうすれば買い置きが無くなったことに皆が気付き, 教員や事務員, 研究員などが補充をするでしょう。

ここでもう少し考えて欲しいのは寓話1と寓話4です。それぞれは, 学生が気を利かせて, 「良かれ」と思ってやったことです。それが結果的には大騒動を引き起こしてしまいました。そこから学ぶべきは, 「自主的に何かやったなら, そのことをことさらにアピールするのが, 正しい態度である」ということです。良いことは隠れてひっそりやるのが美学であるように言われますが, それは時と場合によります。多くの場合, 「やったぜ」アピールをすることでそのことが認知され, 褒められますが, アピールをしないとかえって「余計なことしやがって」となります。


 さてここまでの話をあなたは「ふーん, まあそういうもんかな」という程度で受け止めているでしょう。そういうあなたに言いたい。その10倍くらいの深刻さでこれらの話を受け止め, 心に刻んでください! というのも, 若者のほとんどは, この手の失敗を必ず, しかも何回もやらかします。その失敗によって, 自分の評価を大きく傷つけ, 組織に損害を与え, 高い高い代償を払って, ようやく学ぶのです。でもその失敗が致命的なものだったらどうしますか?


 では, これらの失敗を避けるにはどうすればいいのでしょう? ひとつは, 「やったことをアピールする」です。もうひとつは, 「メールでの連絡のCCに, 思いつく限りの関係者を入れておく」です。
 また, もし仲間が勇気を出して情報を共有したり成果をアピールした時は, 積極的に「イイね!」「ありがとう!」と言いましょう。